薬剤耐性ピロリ菌とは?|もとむら内科・内視鏡クリニック|福岡市南区の消化器内科・内視鏡内科

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医療コラム

薬剤耐性ピロリ菌とは?|もとむら内科・内視鏡クリニック|福岡市南区の消化器内科・内視鏡内科

ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は胃粘膜に生息し、慢性胃炎や胃・十二指腸潰瘍、さらには胃癌の発症リスクを高めることが知られています。ピロリ菌がみつかった場合には抗生物質による「除菌治療」を行い、ピロリ菌を退治します。保険診療の範囲内で行われるピロリ菌除菌治療は、胃酸分泌を抑える薬と二種類の抗生物質(アモキシシリン+クラリスロマイシン)の3剤の組み合わせが第一選択です(日本ヘリコバクター学会,H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2024年版)。この組み合わせで行う除菌治療を「一次除菌」といい、除菌不成功の場合にはクラリスロマイシンをメトロニダゾールというお薬に変更して行う「二次除菌」を行いますが、保険診療で治療できるのはこの二次除菌までとなっています。

近年この中のクラリスロマイシンに耐性を持つピロリ菌が増え問題となっています。耐性菌が出現すると除菌治療の失敗のリスクが高まります。

2018年~2020年の全国調査では、このクラリスロマイシン耐性菌は全体の35.5%と報告されており、特に九州では44.4%と他の地域よりも高いという結果でした(Okimotoら、Helicobacter 2023)。

事前に耐性の有無が分かっていれば、除菌失敗の可能性がある一次除菌を行わずに、最初から二次除菌のお薬を使うことができ、無駄な時間と治療費を節約できることになります。学会でも事前の薬剤耐性検査や、耐性菌に対しての除菌薬の適切な選択が推奨されています。

ではどうやったらこの耐性の有無が調べられるのでしょうか。以前は菌の培養をしなければ分かりませんでしたが、近年ではPCR検査で簡便迅速に検査ができるようになりました。当院でも今年からPCR検査機器(Smart Gene®)を導入して検査を行っていますが、まだ件数は少ないものの25人中13人、実に半数以上の方が耐性菌という驚きの結果でした(202512月時点)。

このように、クラリスロマイシン耐性ピロリ菌の増加は除菌治療の成績に大きく影響するため、耐性の有無を正確に把握し、適切な薬剤選択・治療計画を立てることがますます重要となっています。

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